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zoom RSS 能因歌枕 (略本)

<<   作成日時 : 2003/04/12 18:25   >>

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能因歌枕 (略本)     能因



天地 あめつちといふ。
道 たまほこといふ、わたくし、たまつたといふ。異本、たづきといふ、わたくし、たまたといふ。
夜 ぬばたまといふ、またくらし、ぬまたまといふ、むばたまといふ。
山 あしびきといふ、しなてるやともいふ、そさのをのみことの、あしびきはやまへいらじといひけるをはじめていひそむ。
日 あかねさすといふ、あかほさすといふ、あらか(カラ)びくといふ、山のはにさすとき。私、いろのなみてる、ひるはありさすともいふ。
朔日(ツイタチ) ゆみはりといふ。
月 ひさかたといふ、かげてらすともいふ、あからびくといふ、さやかなりといふ。
晦(ツモゴリ) ありあけといふ。
風 はるかぜ、あき風、ときにしたがふ。
いなおほせ鳥とは、あきよむべし。
をしをば、山がらすすむ、わかれにしとも。
みさごをば、あらいそづらにまつなどにかけてよむべし。
鷹をば、はしたか、したかへるとはてにかへるをいふ。
鷹ほことは、たかのゐる木をいふ。
みやこどりとは、そへてよむべし。
ゆふつけ鳥とは、神にゝはとりたてまつるをいふ。私、には鳥にゆふをつけて神にたてまつるをいふ。
かりがねとは、たかゞりをいふ、あましとゝいふ。
若菜とは、ゑぐ、すみれ、なづなゝどをいふ、さわらびをもいふ、あらばたけにあり。
やへむぐらとは、あれたる所にはひかゝれるをいふ。
うき草とは、あだにうきたることをたとふ。
にはたづみとは、雨のふるにたまのやうにてあるみづのあわをいふ。又いかだやるともいふ。はかなきよにたとふ。
深物をばうつたへのといふ。 帝皇をば、まつらのきみといふ。
人のまゐるをば、あのしくさ、いまのくさといふ。 いそをば、ちりなみといふ。
常なる物をば、ときとなし、とこはとも。 道をば、たまほこといふ。
木をば、やまちかきといふ、たまちきとも。 おほみやをば、もゝしきといふ、こゝのへといふ。
京をば、かましきといふ。 からはしくとは、たけをいふ。
うらぶれてとは、もの思ひてこゝろくるしげなるをいふ。うらぶれて物おもひをればとよめり。
鶯つまもとむとよめり。はるさればつまをもとむる鶯のとよめり。
とよむとは、あまぐもきりあくるかとみればなほとよめり、あまぎりてゆきみむ。
春をば、かすみしくといふ。 夏をば、かげろふといふ。
秋をば、あたまぎりといふ。 冬をば、たまくしげといふ。
暁をば、ありあ(け脱カ)といふ。 霞をば、あしたつといふ。
煙をば、くものゐといふ。 別(ワカル)をば、むらとりといふ。
もみぢをば、いかなるはしはといふ。 人しれぬ思をばあしたづといふ。
人にしられぬといふをば、山がつといふ。 ねたきことをば、ことゝりといふ。
あひがたきをば、やまたづといふ。 心にいれぬをば、ふさをさといふ。
希(マレナル)ことをば、わくらはといふ、たまさかとも。 遣文使(フミヤルユカヒ)をば、たにのおとゝいふ。
無(ナキ)ことをば、ぬれ衣といふ。 十月の雨をば、しぐれといふ。
山里に栖(スム)をば、やまがつといふ。 やまぶきをば、いとはずといふ。
つゝじをば、草まきといふ。 鶯をば、たにいづといふ。
郭公をば、くつぬひといふ。 荒處(アレタルトコロ)をば、よもぎふといふ。
雨のおつる所をば、あまのくもかけといふ。 ひさしきを、すみよしといふ。
常なる物をば、とこはといふ。 旅人のねむごろなるをば、ねざしぐさといふ。
よそに語(カタラフ)人をば、かげかつといふ。 ふたりねたるをば、かげろふといふ。
たまくらをば、かげみといふ。 ちかきをば、あしがきといふ。
ころもをば、白たへといふ。 あるかなきかなる物をば、かげろふといふ。
あましたりをば、のきのたま水といふ。 かげろふ、くろきむしなり。
きゞすといふ鳥をば、けたらなくとも。 あさぢをば、あれたるところにおふる也。
人の懐(フトコロ)に手さしいれて物がたりするをば、むつごとゝいふ。
あけはなるゝ程をば、しのゝめといふ。 いやしき物をば、しづのをといふ。
きゝやう、ありのひこといふ 葦(アシ)をば、よかずとも、なにはめとも、よしとも。
りんだうをば、いもきぐさといふ。 ぼうたんをば、ふかみぐさと云。
しをんをば、くさまきといふ。 つゆ草をば、こねずといふ。
みゝなれ草をば、あれたるはたけなどにおふなどいふ。 をみなへし、女にたとへてよむべし。
家のほかをば、そともといふ。 常のことをば、ありそうみといふ。
あさほさずとは、山のはに月のいるをいふ。 筆の跡をば、はまちどりといふ。
袖をば、衣でといふ。 荒(アレタル)やどをば、よもぎふといふ。
よみぢをば、しでの山といふ。 命をば、たまのをといふ。
ゐもりの注(シルシ)とは、もろこしに人のありくに、むしのちをめのかひなにつけて行(ユク)なるべし。それにもをとこしつれば、そのむしのちのうするなり。

右以宮内省圖書寮蔵本書寫畢、昭和十五年七月。


日本歌学大系 第壱巻 佐佐木信綱編より   平成十五年九月  北山雅治



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